病気と治療 : 肝斑

この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 |  最新アップデート 2023年7月31日

シミはシミでも、治りにくいとされる”肝斑”。

普通のシミ (老人性色素斑)の中に混じってるケースが多く、診断や治療を難しくしています。


残念ながら “肝斑” と診断されると、パニックに陥る方が一定数いらっしゃいます。

「肝斑って何? 結局どうしたらいいの? 

と、頭が大混乱していませんか??


パニックに陥る前に、正しい知識を身につけて、落ち着いて対応できる心構えを作りましょう。


このページでは、独自の視点から、肝斑について解説していきます。

このページを読み終わると、混乱していた頭がスッキリして、怖さも軽減することでしょう。


<目次>

・肝斑が持つ、5つの病態

・実は… 難しい肝斑診断

・とにかく◯◯しない

・レーザーは最終手段

Q/A


● 肝斑が持つ6つの病態


肝斑の病態には、6つの特徴があります。


・角質層が薄い


・基底膜が破壊されている


・炎症性細胞(マクロファージ、リンパ球、肥満細胞)の浸潤がみられる


・血管が増生している


・メラノサイトが活性化している


・正常なメラニン顆粒を多く認める


この中で注目すべきポイントは2つです。

注目すべき病態 : ①炎症を伴う ②メラノサイト活性化
注目すべき病態 : ①炎症を伴う ②メラノサイト活性化

● 実は難しい肝斑診断

 

肝斑は、20歳後半から40歳台の女性に多いといわれます。


発症のキッカケは、女性ホルモンのアンバランス (妊娠出産や閉経)・不適切な化粧品使用・過度の摩擦など様々。

特に、紫外線により悪化することは有名ですよね。

 

実は、加齢により色調が減弱し、紫外線量の少ない冬場では軽快すると言われます。

 

典型的な症状は、次の4点。

左右対称、輪郭がはっきりしない、淡~濃カフェオレ斑、頬部・前額部・上口唇などに好発
左右対称、輪郭がはっきりしない、淡~濃カフェオレ斑、頬部・前額部・上口唇などに好発

分かりやすく4つ挙げましたが、診断が難しい理由は次の点です。


それは、肝斑が、日光黒子(ホクロ)・普通のシミ(老人性色素斑)に混ざり込んでいるケースが大半だからです。


診断補助としてダーマスコピー・VISIA などの機器はあります。しかし、最終診断の際には、医師の経験による部分が大きく占めます。


さて、難しいのは診断だけではなく、治療も複雑なのです。

次項では、複雑な治療について分かり易く、シンプルに解説していきますね。



● とにかく◯◯しない

 

注目するべき病態2つ、覚えてくれていますか?  

①炎症を伴う ②メラノサイト活性化

でしたね。


 つまり、治療のベースは、とにかく刺激しないことです。

 

まず基本は、日常生活で皮膚を刺激している行為(洗顔・メイク拭き取り)を止める、乾燥や紫外線ケアを徹底することでしょう。


経口避妊薬は悪化要因となるため、中止・変更を考える必要があります。


次に、ビタミンC内服・トラネキサム酸内服・ハイドロキノン外用・トレチノイン外用を用います。イオン導入して、薬液(ビタミンCやトラネキサム酸)を真皮に送り込むのも一案ですね。

 

多くの場合には、これらで改善します。

改善後は内服を休薬し、外用のみで経過をみます。

悪化しなければ、外用も中止することができます。



レーザーは最終手段

 

肝斑は、主に基底層にあるメラノサイトが活発で、正常なメラニン顆粒を多く認める病態でしたね。


この病態に対するにレーザー照射は、メラノサイトを刺激し、病態を悪化させてしまう可能性があります。


これが、”肝斑に対し、レーザーは原則禁忌” と言われる理由です。


しかしながら、一部の症例では、改善が得られないこともあるのです。

この場合、ピコレーザーなどに頼らざる得ないことになります。


肝斑の場合には、特殊な打ち方を余儀なくされます。

トーニング” という打ち方で、メラノサイトへの刺激を避けつつ、メラニン自体を狙い打ちするイメージです。


Qスイッチトーニングは、メラノサイト内のメラノソーム。 ピコトーニングは、メラニン顆粒を破壊することができるとされます。

1回、計6回程度が目安となります。



● Q&A

Q1 : 肝斑あると、ダーマペンしない方がいいですか?

A1 : 結論から言えば、しない方がいいです!

理由。肝斑は、メラニンが過剰に産生され続ける悪循環。メラノサイトに刺激を与えると、かえって悪化してしまうと推測されます。